排水口にたまる髪の量が増えた気がする。ブラシに絡まる毛束が目に見えて太い。春から初夏にかけて、そんな相談がサロンでも急増する。
結論から言うと、抜け毛が増えること自体は季節の生理現象として正常だ。ただし「一時的な季節性の抜け毛」と「頭皮環境の悪化による要注意な抜け毛」は毛根の形を見れば区別できる。美容師歴10年、延べ12,000名の頭皮を見てきた経験から言えるのは、頭皮を整えることで季節性の抜け毛を最小限に抑えられるということだ。
なぜ春〜初夏に抜け毛が増えるのか
人間にも動物の「換毛期」に近い仕組みがある。春は冬の間に休止期に入った毛髪が一斉に抜け落ちるタイミングで、通常1日50〜100本の抜け毛が150本前後に増えることも珍しくない。AGAメディカルケアクリニックの解説によると、秋ほど顕著ではないが、春〜初夏もホルモンバランスや自律神経の変動で抜け毛が増える時期とされている。
加えて、3〜5月は寒暖差が大きく自律神経が乱れやすい。交感神経が優位に傾くと頭皮の血管が収縮し、毛根に届く栄養が減る。ここに花粉や紫外線の増加が重なると、頭皮のバリア機能が落ちてさらに抜けやすくなる。
毛根の形で見分ける「正常な抜け毛」と「要注意な抜け毛」
排水口やブラシの髪を1本つまんで、根元を見てほしい。成分から逆算するのと同じで、「結果」から「原因」をたどるのが確実だ。
正常な抜け毛の毛根
- マッチ棒のように根元がふっくら丸い
- 色は黒〜やや白っぽい(毛根鞘がついている)
- 毛先まで太さが均一
この形なら、毛周期(ヘアサイクル)を全うして自然に抜けた髪だ。季節的に本数が増えても心配はいらない。
要注意な抜け毛の毛根
- 毛根が細くとがっている、またはほぼない
- 毛根がギザギザ・いびつな形をしている
- 髪全体が細く短い(3cm以下の短毛)
AGAスキンクリニックの解説によると、成長途中で抜けた髪は毛根のふくらみが乏しく、ヘアサイクルが乱れているサインだ。こうした毛が抜け毛全体の2〜3割を超えるなら、季節要因だけでは説明できない。
自宅でできる3つのセルフチェック
サロンでは頭皮スコープを使って毛穴の状態まで確認するが、自宅でも以下のチェックで「受診が必要かどうか」の目安はつけられる。
チェック1:枕の抜け毛カウント
朝起きたとき、枕に落ちている毛を3日間数える。毎朝20本以上が3日続くなら、1日の総抜け毛が150本を超えている可能性が高い。
チェック2:毛根ルーペ観察
100円ショップのルーペ(5〜10倍)で毛根を確認する。先ほどの「要注意な毛根」が3本中1本以上あるなら黄信号。
チェック3:分け目の地肌幅
いつもの分け目をスマホで撮影し、1ヶ月前の写真と比較する。地肌の見える幅が明らかに広がっていたら、毛密度が下がっている可能性がある。
頭皮タイプ別・抜け毛を減らす夜のケア習慣
抜け毛対策の基本は、寝る前のケアが命。夜の頭皮環境をどう整えるかで、翌朝の抜け毛の量は変わる。
脂性頭皮タイプ
夕方になると頭頂部がベタつく人。皮脂が毛穴に詰まると毛根への酸素供給が落ちるので、予洗い3分を徹底して皮脂を浮かせてからシャンプーする。洗浄力はアミノ酸系+ベタイン系のバランスタイプがよい。ラウレス硫酸Naだけのシャンプーは皮脂を取りすぎてリバウンド分泌を招く。
乾燥頭皮タイプ
フケが粉状に出る人。洗いすぎが抜け毛を加速させるパターンが多い。シャンプーは1日1回、ぬるま湯(38℃前後)で予洗い3分→アミノ酸系シャンプーを泡立ててから頭皮にのせる。タオルドライ後にスカルプセラム(セラミド・パンテノール配合)を頭皮に直接つけてなじませる。
敏感頭皮タイプ
季節の変わり目にかゆみや赤みが出る人。私自身、産後にこのタイプに一時的に変わった経験がある。お客様でも産後3ヶ月で髪が大量に抜けて気持ちまで沈んでしまった方がいたが、スカルプセラム+ビタミンB群の内服+睡眠の質を改善することで、3ヶ月後に新生毛が増えた。産後や体調変化による抜け毛は一時的だが、頭皮を整えるケアをすれば回復は早い。内側と外側、両輪で対処するのが鍵だ。
やってはいけない3つのNG習慣
- 濡れた髪のまま寝る:濡れた髪はキューティクルが開いて最も弱い状態。枕との摩擦で物理的に毛が引きちぎれる。必ずドライヤーで8割乾かしてからナイトケアに入ること
- 朝シャンだけで夜は洗わない:1日分の皮脂と汚れを頭皮にのせたまま寝ると、毛穴環境が悪化する。夜23時までに洗髪を済ませ、頭皮マッサージで血行を促すのが理想
- 育毛剤を「つけるだけ」にする:頭皮が汚れた状態で育毛剤をつけても浸透しない。予洗い→シャンプー→タオルドライ→育毛剤の順番を守る
4週間で判断する——焦らないことが最善の対策
抜け毛が気になり始めると、今すぐ何とかしたくなる。だが頭皮環境の変化が毛に反映されるまでには最低4週間かかる。私はいつも「4週間使って毛先まで変化があるかで判断しましょう」とお客様に伝えている。逆に言えば、4週間正しいケアを続けて変化がなければ、皮膚科やAGAクリニックへの相談を検討するタイミングだ。
季節の抜け毛は、あなたの髪が正常にサイクルしている証拠でもある。まずは今夜の予洗い3分と、毛根のセルフチェックから始めてみてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 1日何本以上抜けたら病院に行くべきですか?
A. 明確な基準本数はありませんが、1日200本以上が2ヶ月以上続く場合や、毛根が細くとがった抜け毛が全体の3割を超える場合は皮膚科への相談をおすすめします。大正製薬のリアップ情報でも、通常の抜け毛は1日50〜100本が目安とされています。
Q2. 女性でも季節性の抜け毛は起きますか?
A. はい。性別を問わず、春と秋に毛周期の関係で抜け毛が増えるのは自然な現象です。ただし女性はホルモンバランスの変動(産後・更年期など)が重なると量が増えやすいため、毛根チェックで「要注意な抜け毛」の割合を確認しましょう。
Q3. シャンプーを変えるだけで抜け毛は減りますか?
A. 頭皮タイプに合わない洗浄力のシャンプーが原因で抜け毛が増えているケースは多いです。成分から逆算して、自分の頭皮に合った洗浄成分を選ぶことで改善が見込めます。ただし4週間は継続して判断してください。
Q4. 頭皮マッサージは抜け毛に効果がありますか?
A. 血行促進による間接的な効果は期待できます。ただしマッサージだけで劇的に変わるわけではなく、シャンプーの見直し・予洗い・ナイトケアとセットで取り組むのが効果的です。


