6月に入ると、カラーしたばかりなのに色が抜けるのが早い、毛先がゴワついてまとまらない、という相談がサロンで一気に増える。原因を聞くと「シャンプー変えたほうがいいですか?」と返ってくるけれど、多くの場合シャンプーではなく紫外線。顔には日焼け止めを塗るのに、頭皮と髪は無防備なまま。これがこの時期のヘアトラブルの正体です。

美容師として10年、延べ12,000名のヘアケアを見てきて確信しているのは、頭皮を整えることが夏のヘアダメージ対策の起点だということ。紫外線は髪の表面だけでなく、頭皮の毛母細胞にまで届いて秋の抜け毛リスクを上げる。帽子だけでは不十分な理由と、成分から逆算して選ぶ髪のUVケアを整理します。

紫外線が髪と頭皮に与えるダメージの仕組み

紫外線にはUVAとUVBの2種類があり、髪と頭皮への影響がそれぞれ異なります。

UVB(短波長)は頭皮の表面に炎症を起こす紫外線。日焼けして赤くなる・ヒリヒリするのはUVBの仕業です。頭皮は顔の皮膚より薄いうえに毛穴が密集しているため、炎症が起きると皮脂の酸化が加速して、かゆみやフケの原因になります。

UVA(長波長)は頭皮の奥、真皮層まで到達する紫外線。毛根周辺の毛母細胞にじわじわとダメージを蓄積させ、夏に浴びた紫外線の影響が秋口の抜け毛として現れるケースがあります。

髪の毛に対しては、紫外線がケラチンタンパク質のS-S結合(ジスルフィド結合)を切断します。これは髪の強度を支える結合なので、切れるとキューティクルが剥がれやすくなり、内部のタンパク質や水分が流出する。結果として手触りがゴワつき、ツヤがなくなり、カラーの色素も一緒に抜けていく。デミ毛髪科学研究所の報告によると、紫外線はメラニン色素も分解するため、黒髪でも赤茶色っぽく退色する現象が起きます。

「帽子だけで大丈夫」が危険な3つの理由

頭皮のUV対策として帽子は有効ですが、帽子だけに頼るのはリスクがあります。

理由1:帽子から出ている髪は無防備
ポニーテールやお団子から出た毛先、分け目、もみあげ周辺は帽子ではカバーできません。特に毛先はもともとダメージが蓄積しているため、紫外線でさらにS-S結合が切れやすい状態です。

理由2:蒸れによる頭皮環境の悪化
夏の帽子は通気性が悪いと頭皮が蒸れ、皮脂分泌が増加して酸化が進む。以前、夕方の頭皮臭の原因を調べた際に、皮脂の酸化サイクルがシャンプー後4〜6時間で進行することを体系化しましたが、帽子の蒸れはこのサイクルを加速させます。紫外線は防げても、頭皮環境が悪化しては本末転倒です。

理由3:UVAは帽子の素材を透過する
UPF値(紫外線保護指数)が低い薄手の帽子では、UVAの一部が透過します。UVAは毛根の深い位置まで届くため、「帽子をかぶっていたのに頭皮が赤い」という事態が起きるのはこのためです。

成分から逆算する髪用UVケアの選び方

髪と頭皮のUVケア製品は、大きく3タイプに分かれます。成分から逆算して自分に合うタイプを選ぶのが失敗しないコツです。

UVスプレータイプ

もっとも手軽で、髪にも頭皮にも使える。成分表で確認すべきは紫外線防御成分の種類です。

  • 紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛):物理的にUVを反射する。頭皮への刺激が少ないが、白浮きしやすい
  • 紫外線吸収剤(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン等):UVを吸収して熱に変換する。透明で使用感が良いが、敏感頭皮には刺激になるケースがある

頭皮が敏感な方は散乱剤ベースを選ぶのが安全。SPF30・PA+++以上あれば日常の通勤・外出には十分です。

UVカットヘアオイル・ミルク

アウトバストリートメントにUV防御機能を加えたタイプ。毛先の保護に向いています。成分表で確認したいのは、UV成分に加えて補修成分が入っているか。加水分解ケラチン、ヘマチン、メドウフォーム-δ-ラクトンなどが配合されていれば、UVカットと同時にダメージ補修もできて一石二鳥。

ただし、頭皮に直接つけるとビルドアップ(蓄積)の原因になるため、毛先〜中間に限定して使うこと。頭皮にはスプレータイプ、毛先にはオイルと使い分けるのが理想です。

UPF素材のヘアアクセサリー

UPF50+のスカーフやヘアバンドは、帽子が使えないシーンで役立つ。通気性のある素材を選べば蒸れも軽減できます。ただし髪全体はカバーできないので、あくまで補助。

頭皮タイプ別・夏のUVダメージを防ぐナイトケア

紫外線を浴びた日のケアは、その日の夜が勝負。寝る前のケアが命だと日頃から伝えていますが、夏のUVダメージにおいてはこれが特に重要です。

脂性頭皮の方

紫外線で皮脂の酸化が加速しているため、夜のシャンプーでその日の酸化皮脂を確実にリセットすること。予洗い3分でUVスプレーの成分と汗・皮脂を浮かせてから、アミノ酸系シャンプーで指の腹もみ洗い。洗浄力の強い硫酸系を使うと皮脂を取りすぎて翌朝の過剰分泌を招くので注意。

乾燥頭皮の方

紫外線で頭皮のバリア機能が低下し、水分が蒸発しやすくなっている。シャンプー後にスカルプ用の保湿ローション(グリチルリチン酸ジカリウム配合のものが鎮静作用あり)を頭皮に直接つけてから、頭皮→根元→中間→毛先の順でドライヤー。冷風仕上げでキューティクルを閉じることを忘れないこと。

敏感頭皮の方

日焼け後の頭皮が赤い・ヒリヒリする場合は、まず冷やすこと。濡らしたタオルを頭皮にあてて熱を取ってから、低刺激のベタイン系シャンプーでやさしく洗う。アルコール(エタノール)が上位に記載されたスカルプローションはしみる可能性があるので避ける。

どの頭皮タイプでも共通して大事なのは、頭皮から完全に乾かすこと。紫外線でダメージを受けた頭皮に湿気が残ると、雑菌が繁殖してかゆみやフケの原因になります。

カラー後の退色を紫外線で加速させないための3つの習慣

サロンでカラー後のお客様に「次回まで色を持たせたい」と相談されたとき、シャンプーの見直しに加えて必ず伝えるのがUV対策です。以前カラー後のパサつきの原因を体系化した際にも感じましたが、色落ちの原因をシャンプーの洗浄力だけに帰するのは片手落ちで、夏場は紫外線という外的要因を無視できません。

  1. カラー当日〜3日間はUVスプレーを必ず使う:カラー直後は色素が定着しきっていないため、紫外線の分解作用を受けやすい。外出前にSPF30以上のUVスプレーを髪全体に振っておく
  2. ヘマチン配合シャンプーで残留アルカリを除去しつつUVケア:カラー後の残留アルカリはキューティクルを開いたまま固定するため、紫外線の侵入口を広げてしまう。ヘマチンでアルカリを中和すると、紫外線防御力も間接的に上がる
  3. 外出時は分け目を変える:分け目は頭皮が直接露出する場所。同じ分け目のままだと紫外線が集中して退色・頭皮ダメージが偏る。週に1回は分け目を5mm〜1cmずらすだけでダメージが分散できます

4週間で判断する夏のUVケアルーティン

シャンプーの評価に頭皮ターンオーバー1周期(28日)が必要なのと同じで、UVケアも4週間続けて変化を見るのが正しい判断期間です。以下のルーティンを4週間試してみてください。

朝(外出前)

  • 頭皮にUVスプレーを分け目・つむじ中心に振る(15cm離して2〜3プッシュ)
  • 毛先〜中間にUVカットオイルまたはミルクを薄くなじませる
  • 2〜3時間おきの塗り直しが理想。難しければ昼休みに1回

夜(帰宅後)

  • 予洗い3分:ぬるま湯(38℃以下)でUVスプレーの成分と汗・皮脂を流す
  • 頭皮タイプに合ったシャンプーで指の腹もみ洗い
  • 頭皮用保湿ローション(UV後の鎮静成分入り)を塗布
  • 頭皮→根元→毛先の順にドライヤーで完全乾燥。冷風仕上げ

4週間後に、カラーの退色スピード、頭皮のかゆみ・赤み、毛先のゴワつきがどう変化したかを確認してください。

FAQ

髪用の日焼け止めスプレーはSPFいくつを選べばいいですか?

日常の通勤・買い物程度ならSPF30・PA+++で十分です。海やプール、長時間の屋外レジャーの場合はSPF50+・PA++++を選んでください。SPFが高いほど紫外線防御力は上がりますが、配合される吸収剤の量も増えるため、敏感頭皮の方は必要以上に高いSPFを選ばないほうが安全です。

頭皮が日焼けして赤くなった場合、すぐにできる応急処置は?

まず冷やすこと。保冷剤をタオルで包んで頭皮にあてるか、冷水で頭皮を冷やします。その後、アロエベラやグリチルリチン酸ジカリウム(カンゾウ由来の抗炎症成分)配合の頭皮用ローションで保湿。ヒリヒリがひどい場合は2〜3日シャンプーを控え、ぬるま湯のみで流すほうが頭皮への負担が少ないです。赤みが1週間以上引かない場合は皮膚科を受診してください。

曇りの日も髪のUV対策は必要ですか?

必要です。曇りの日でもUVAの約80%は地表に届いています。UVAは髪の内部構造やメラニンに届く波長なので、曇りだから大丈夫とは言えません。晴れの日と同じ対策を基本にしてください。

プールや海の後のヘアケアで気をつけることは?

塩素や海水はキューティクルを開かせる作用があるため、紫外線ダメージと重なると髪への負担が倍増します。プール・海から上がったらまず真水で髪と頭皮をすすぎ、帰宅後にシャンプーで塩素や塩分を落としてからトリートメント。アウトバスにUVカット成分入りのオイルを使えば翌日のダメージ軽減にもなります。

子どもの頭皮にもUVスプレーを使って大丈夫ですか?

使えます。ただし紫外線吸収剤不使用(ノンケミカル)で、アルコールフリーの製品を選んでください。小さいお子さんは帽子との併用が基本。わが家でも娘には散乱剤ベースのスプレーと通気性のある帽子を組み合わせています。

参考文献